コンタクトレンズ
監修 眼科専門医 川端 秀仁(かわばた眼科)
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コンタクトレンズは、なぜ落ちないのでしょうか?
コンタクトレンズは「全く」落ちないというわけではありませんが、涙の表面張力が機能している状態であれば、普通は落ちません。これは、ガラス板の上に水で濡れた薄いガラス板をくっつけるとなかなか外れなくなるのと同じ理由によるのです。
従って、激しいスポーツなどをしても外れる心配は殆どありません。
また、表面張力は表面積が広い方が大きくなるため、サイズが大きいソフトコンタクトレンズの方がハードコンタクトレンズよりも外れにくいと言えます。
では、コンタクトレンズが落ちてしまう…涙の表面張力が機能していない状態とはどのような時でしょう。
それは、目が乾燥状態にさらされた時です。表面張力が機能していないのでコンタクトレンズは外れやすくなります。
例えば、長時間パソコンを見ているとまばたきの回数が減る事により目が乾燥してしまいます。エアコンが利いて空気が乾燥している室内であれば、なおさらです。
このような場合は、意識的にまばたきの回数を多くし、それでも目が乾くようであれば人工涙液を点眼すると良いでしょう。
さらに、窓を開けて運転しているような、直接風が目に当たるような状況でも外れやすくなるので危険といえます。
できればメガネを使用するか、サングラス等で直接風が目に当たらないようにするべきでしょう。 -
「コンタクトレンズは、メガネのように曇ることはない」と聞いていたのですが、最近よく曇ります。何故ですか?
通常の使用では、コンタクトレンズはメガネのように、屋外との温度差や湯気などで曇ることはありません。では、どうして質問のような「曇り」が起きてしまうのでしょうか?考えられる可能性は2点です。
1点目は、レンズ表面への汚れの付着が考えられます。
レンズ表面に汚れが付いていると、レンズと涙液の馴染み(親水性)が悪くなって曇りやすくなるのです。
2点目は、レンズ表面の傷があげられます。
レンズ表面にキズがあると、キズに汚れが入り込んでしまうため、更に曇りやすくなってしまうのです。
また、レンズ表面の傷は目を傷つけることにもなるので、早めに眼科で目とレンズの検査を受けた方が良いといえます。
以上、いろいろなトラブルを防ぐためにも、毎日の取扱いやお手入れにも細心の注意を払いたいものですね。 -
メガネとコンタクトレンズの違いを具体的に教えてください。
メガネもコンタクトレンズも視力矯正を行う道具ですが相違点がいくつかあります。
一番の違いは、メガネは眼とレンズの間が12mm程度離れ、フレームで固定されていますが、コンタクトレンズは眼(角膜)の上に涙を介して直接装用される点です。
この大きな相違点が、見え方や取扱方法の違いなどに色々な影響を与えます。
下記の表がメガネ・コンタクトレンズの簡単な比較となりますので、購入時などの参考としてください。
メガネ コンタクトレンズ 視野(見える範囲) フレームの範囲内のみです。 正常裸眼と同程度です。 見え方 歪み、網膜像の変化率(見え方の大きさ変化)が比較的大きくなります。 歪み、網膜像の変化率(見え方の大きさ変化)が少なく、自然な見え方となります。 湯気の影響 曇りやすい。 曇らない。 スポーツ時の装用 視野が狭く、衝撃によりメガネがずれたり、レンズがはずれたりする場合があるため、激しいスポーツには向きません。 視野が広く、ずれたりはずれたりしにくいため最適。(ハードタイプは、ずれたり衝撃により割れる危険性もある為、激しいスポーツには向きません。) 装用規則の必要性 規則的な装用の必要は、特にありません。 眼(角膜)への影響が大きいために、規則的な装用が必要です。 取扱い 光学的な面での影響(メガネの曲がり・歪みなどによる見え方の変化)を除けば、安心して取扱いが出来ます。 眼(角膜)に直接装用するものなので、衛生面などで慎重な取扱いが必要です。 定期検査の必要性 眼の疲れ・見え方の変化・掛け具合の不良などが無ければ、特に必要ありません。 眼に関する自覚症状の有無に関わらず、3ヶ月に1回の定期検査は必要です。 -
ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズはどちらがよいのですか?
それぞれに長所と短所があり、一概には言えません。
目の状態や使用目的、使用環境等によって合うタイプが異なります。 -
コンタクトレンズはスポーツに最適と聞いていますが?
コンタクトレンズはメガネのように視野がフレームによって阻害されたり、外部からの衝撃で破損するといったことも滅多にありません。ですから、基本的にはスポーツには向いています。但し、ハード系のレンズはレンズの大きさ(直径)が小さいため、スポーツの種類によってはズレたり、脱れたりしてしまうことがあります。ソフトはハードよりもサイズが大きく、滅多なことでは脱れたりはしません。よって、ソフトの方がよりスポーツに向いていると言えます。しかし、コンタクトレンズは涙の上に浮かんでいるものであるため、水泳には向きません。
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コンタクトレンズが不向きな人とはどのような人ですか?
自分でコンタクトレンズの取扱いができない幼児や老人、ものぐさで装用規則が守れない人。
また、コンタクトレンズは高度管理医療機器であるため、全て眼科医が処方します。その際に目や瞼の状態もチェックしますが、眼科医が装用不適と判断した疾患や障害があった場合には、コンタクトレンズを装用することはできません。 -
メガネとコンタクトの度数が違っています。間違いではないのでしょうか?
ポイントは、眼とレンズの距離にあるのです。
コンタクトレンズは、目とレンズの間には涙があるだけですから、装用距離はほぼゼロですが、比べてメガネはというと目とレンズの装用距離は約12ミリあります。 この装用距離の差があるために、同じ視力を出すのであれば、近視の場合はコンタクトレンズの方がメガネに比べて若干弱めの度数となり、遠視の場合はコンタクトレンズの方がメガネに比べて若干強めの度数となるのです。
但し、近視も遠視も数値が3.00D(ディオプトリー:レンズ度数の単位。視力表の単位とは違います)以下位の弱い度数の場合は、コンタクトレンズとメガネでの度数の差は殆ど生じません。が、強度になるほど度数差が生じる傾向にあります。
つまり、きちんと検査をして作られたものであれば、コンタクトレンズとメガネで少々度数に違いがあっても心配はありません。
最後に…
コンタクトレンズについては、快適な見え具合を続けるためにも、眼科医による定期検査を忘れずにお受けください。 -
コンタクトを外した後にメガネを掛けると、ぼやけて見えたりする事があると聞きましたが?
コンタクトからメガネに掛け替えた時に「メガネをかけているのにぼやけたり、にじんだりして見える」といった事が起こる場合があります。これをスペクタクルブラー現象といいます。
これは、ハード・ソフトに関わらずコンタクトレンズの長時間装用により、角膜が酸素不足の状態で、角膜浮腫を起こし屈折状態が一時的に変化していることが原因と考えられています。特に酸素を通さないハードコンタクトレンズを長時間装用している方に多く見られ、酸素透過性の高いレンズになるに従い少なくなる傾向にあるようです。いずれにしても、コンタクトレンズの装用時間が長すぎることに起因しているので、このような症状がでたら、まずは、装用時間を短くして眼をいたわることを心がけましょう。また、コンタクトレンズを外した時の角膜の状況は常に一定では無いので、その時々によってメガネを掛けた時の見え方は多少変わる場合もあります。
このスペクタクルブラー現象は、一時的ですので、通常は約1~2時間程度でもとの角膜状態に戻り、症状は解消されることが一般的です。 -
コンタクトレンズで目を傷つけて失明することはありませんか?
全くないとは言えません。
傷口が二次感染により化膿するなど悪化した場合、失明する危険性はあります。ハードコンタクトレンズの場合は傷による痛みが強いため、大事に至ることは少ないのですが、ソフトコンタクトレンズは痛みが少ないため気づかずに装用を続行し、病状を悪化させることがあります。しかし、装用規則や注意事項をきちんと守れば、大事に至ることはまず考えられません。 -
コンタクトレンズをつけたまま眠ることはできますか?
コンタクトレンズは目にとって異物です。装用したまま眠らないでください。
目を閉じているときには、角膜は瞼の裏側から栄養や酵素を得ています。コンタクトレンズを装用したまま眠ると、それらの運搬路を遮断することになり、代謝障害を起こし、角膜を痛めることがあります。 -
つけたまま眠れるコンタクトレンズはないのですか?また、居眠りもいけないのですか?
原則的には、居眠り程度でも脱す必要があります。
しかし、電車等で眠ってしまった場合(1時間程度が限界)には、早急にコンタクトレンズを脱し、十分に目を休めてください。ソフトコンタクトレンズ・酸素透過性ハードコンタクトレンズには、厚生省から「連続装用(つけたまま眠れる)」の認可が下りている商品もありますが、連続装用に関しては、より厳しい装用管理条件があります。使用に際しては、眼科医に相談してください。 -
コンタクトレンズに慣れるまでどのくらいかかりますか?
個人差がありますが、一般的には、ハードコンタクトレンズ系のもので約2~3週間程度、ソフトコンタクトレンズで約1~2週間程度と考えればよいでしょう。
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コンタクトレンズが使えない環境はありますか?
不向きな環境はあります。
工事現場等の埃っぽい所では、塵やゴミが入って目を痛めることがあります。また、空調の効いた乾燥した室内でVDT作業(パソコン等の画面を見ながらの仕事)を長時間行うような場合にも、コンタクトレンズはあまり向きません。これは、瞬きが少なくなることと湿度が低いことから、涙の蒸発が早まってしまうためです。コンタクトレンズは涙の表面張力で装着されていますので、涙が少なくなってしまうと異物感が強くなったり、脱れやすくなったりしてしまいます。風の強い時も、コンタクトレンズにとっては不向きな環境といえます。 -
コンタクトレンズが目の奥に入り込んで取れなくなってしまうことはないのですか?
瞼の裏側は、結膜のうという袋のような状態になっています。したがってコンタクトレンズがズレても、必ずこの範囲内にあるため、入り込んで取れなくなるということはありません。
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コンタクトレンズ装用中に点眼薬を使用できますか?
点眼薬によっては、レンズに影響を及ぼす場合があります。
点眼薬の使用については、必ず、眼科医にご相談ください。 -
コンタクトレンズが脱れなくなったら、どうすればよいのですか?
まず、洗面器に水を張り顔を浸けて、水の中で目を開けるとたいてい脱れます。
この際、片眼ずつ行わないと左・右のレンズがわからなくなります。この方法でも脱れない場合は、眼科医に連絡して指示を受けてください。 -
コンタクトのレンズケアは、なぜ必要なのですか?
コンタクトレンズは眼に直接装用する視力補正用具のため、涙に含まれるタンパク質・脂質・カルシウムなどの様々な汚れが付着します。
レンズに付着する「汚れ」は、コンタクトレンズ本体の劣化に繋がるため、毎日のレンズケアを怠ると汚れがどんどん蓄積され、レンズの買い替え時期を早めてしまいます。
また、汚れたレンズには細菌などの微生物が付着し、繁殖する可能性も大きく、大切な眼に重大なダメージを与えかねません。
眼の健康を守りコンタクトレンズを長く快適に使用するためには、レンズケアは欠かすことは出来ません。
(1日単位の使い捨てコンタクトは、眼からレンズを外したらすぐ捨て、再度装用する事がありませんので、レンズケアの必要はありません)
■ハードタイプとソフトタイプでは素材が違うため、レンズケア方法が異なります。(最も違う点は、ソフトコンタクトレンズには消毒が必要であるという点です)水分を多く含むソフトコンタクトは、毎日の消毒を行わなければ、細菌やカビが繁殖しやすく、眼に悪影響を与えるおそれがあります。以前はこの「消毒」を煮沸消毒で行っていたため、ソフトコンタクトレンズのレンズケアは面倒という印象があったようです。が、最近では1液で洗浄・すすぎ・消毒・保存が行える簡単なケアシステムが出てきて、ハードコンタクトレンズと同様にレンズケアは簡単になっています。
ケア方法が簡単になり、ケア用品の種類もかなり増えてきていますが、使用方法等については、良く確認してから購入することをお勧めします。 -
コンタクトレンズには、なぜ定期検査が必要なのですか?
コンタクトレンズは眼に直接装用する医療用具です。
調子良く快適に使用していても、知らず知らずのうちに眼に障害が発生したり、レンズにキズがついたり、汚れが付着したりしていることがあります。
定期検査は、そのようなトラブルをいち早く発見し、症状が悪化するのを未然に防ぐ大切な検査ですので、医師の指導のもと、必ず受けるようにしてください。(医師の指示の無い場合でも3ヶ月に1度は検査を受ける習慣をつけましょう)
特にソフトコンタクトレンズは装用感が良いので、自覚症状が発生しにくく、眼障害などへの対応が遅れるケースが比較的多いため、眼の安全を守るために定期検査は重要となります。 -
コンタクトを着けるのは、お化粧の前と後、どちらが良いのでしょうか?
コンタクトレンズを着けるのは、お化粧の前が良いでしょう。
その主な理由は、
1. コンタクトレンズ装用後の方が、ご自分の顔がよく見えて、お化粧がしやすくなるということ。
2. お化粧の後では、眼の周りや睫毛、或いは手・指から化粧品の成分がコンタクトレンズに付着する可能性があるということ。
以上の2点があげられます。
コンタクトレンズに付着したお化粧の成分は、なかなかきれいに取り切れません。
特にソフトコンタクトレンズは、サイズが大きいので、化粧品(の成分)が付着しやすい上に、レンズ内部に成分を吸収する性質があるため、レンズが使用できなくなることさえあるのです。
以上のリスクを考え併せてみると、コンタクトレンズを着けるのは「お化粧の前」がお勧めといえます。